KOMATSUの挑戦者たち
そのチャレンジが不可能を可能にする
第3章熱処理との闘い
クラックの発生を防ぐには、アルミ材料の熱処理レベルからもアプローチが必要になった。それまでの熱処理レベルはT5(高温加工から冷却後人工時効硬化処理をしたもの)。これがクラックの発生を招いていると睨んだ竹山は、インターネットや書籍をしらみつぶしに調べて、Oレベル(材料が柔らかい状態を得るように焼なまししたもの)の材料処理が最適ではと思い始めた。
ところが当時の小松工業にはOレベルのノウハウがない。文献を頼りにトライ用の熱処理炉でO材を作り、材料形状のトライと合わせて最適材料を探った。
よう見まねで熱処理と取り組む竹山。その背中に厳しくも優しいまなざしを投げかける内藤。20数年のキャリアの差を超えて、冷間鍛造という技が確実に受け渡されていた。
熱処理レベルが変われば部品の機械的性質や表面硬度が変わる。この了解を客先から得てくる仕事は営業の西村が担当した。内容を伝え、耐久テストをクリアすればOKという回答を得て、開発は前進した。
余談だが外装部品であるアジャスターチェーンは機械的性質をクリアするだけでなく、デザイン性の観点からも評価される。客先で最も売れているモデルのアジャスターチェーンだけにデザインの承認も厳しかったが、その高いハードルもなんとか超えた。